
「定年までに住宅ローンを完済する」つもりが、退職後も返済が残ってしまった——。これは決して珍しいケースではありません。金融広報中央委員会の調査では、60代でも約5人に1人が住宅ローンを抱えているとされています。この記事では、定年後に住宅ローンが残ったときの現実的な選択肢を、公的データをもとに整理します。自宅に住み続けたい方に向けた「リースバック」を中心に、売却・借り換え・専門家相談まで、あなたの状況に合った道筋を一緒に考えていきましょう。
定年後も住宅ローンが残る世帯は意外と多い
「定年までに完済」という計画が崩れ、退職後も返済を続ける世帯は一定数存在します。まずは公的データで実態を正しく把握しましょう。
60代以上の住宅ローン保有・残高の実態
60代で住宅ローンを保有する世帯の割合(およそ5人に1人)
60代の住宅ローン平均残高
70代以上で住宅ローンを保有する世帯の割合(およそ14人に1人)
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに三井住友銀行が試算した数値(世帯主の年代別)。年度や調査により数値は変動します。
かつて「住宅ローン残債が多い高齢世帯が大半」といった誇張された情報が出回ることがありますが、公的データで見ると60代で保有しているのは約2割、平均残高は約920万円が実態です。とはいえ、年金生活で返済を続けることが家計の負担になるケースがあるのは事実です。
なぜ定年後もローンが残るのか?主な5つの原因
- 住宅購入年齢の上昇
住宅ローン利用者の借入時の平均年齢は、2000年代前半の約37歳から近年は約40歳へと上昇しています(日本経済新聞・住宅金融支援機構データより)。 - 借入期間の長期化
35年ローンが標準化し、借入時点の完済予定年齢の平均は70歳を超え、完済年齢の平均は約73歳まで上昇しています。 - 借り換えによる返済期間の延長
金利見直しの際に期間を延ばすと、結果的に定年後も返済が続くことがあります。 - 教育費を優先し繰上返済が後回しに
子どもの進学費用を優先した結果、繰上返済の余力が残らないケースです。 - 退職金の伸び悩み
厚生労働省「就労条件総合調査(令和5年)」では、大卒・勤続35年以上の定年退職者1人あたり平均退職給付額は前回調査の約2,173万円から減少傾向にあります。
「自宅に住み続けながら住宅ローンを整理できないか」とお考えなら、リースバックという選択肢があります。まずは無料査定で可能性を確認してみましょう。
年金生活で住宅ローンを払い続ける4つのリスク
リスク1:生活費の圧迫
総務省「家計調査」2025(令和7)年平均によると、夫婦ともに65歳以上の無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対して消費支出が約26.4万円となり、毎月約4.2万円が不足しています。この収支はあくまで「住宅ローン返済がない場合」の平均であり、ここに住宅ローン返済が加わると、不足額はさらに大きくなります。
たとえば月8万円の住宅ローン返済が残っている場合、平均的な家計の赤字額(約4.2万円)に上乗せされ、月10万円超の赤字になる可能性があります。預貯金の取り崩しが続くと、老後資金が早期に枯渇するおそれがあります。家計全体の見直しについては「40代で住宅ローンが払えない時の対処法」も参考になります。
リスク2:健康問題による収支悪化
厚生労働省のデータによると、要介護認定率は年齢とともに上昇します。
- 65歳以上全体の認定率:約18.9%
- 75歳以上全体の認定率:約31.5%
- 85歳以上全体の認定率:約57.7%
介護や医療の費用が増えると、住宅ローン返済との両立がより難しくなります。また団信(団体信用生命保険)には年齢による保障終了の定めがある商品もあり、契約内容の確認が重要です。
出典:厚生労働省「介護分野の最近の動向について」(2022年9月末認定者数等をもとに作成)。
リスク3:変動金利の上昇による返済額増加
| 適用金利 | 毎月返済額(概算) |
|---|---|
| 金利0.8% | 約13.0万円 |
| 金利2.0% | 約13.8万円 |
| 金利3.0% | 約14.5万円 |
上記は概算シミュレーションです。実際の返済額は借入条件により異なります。金利上昇への備えは「日銀利上げで変動金利が上がった!返済額の増加シミュレーションと5つの対策」で詳しく解説しています。
年金収入が中心の世帯にとっては、月数千円〜1万円の増加でも家計への影響が大きくなります。
リスク4:相続時の負債承継
住宅ローンが残ったまま名義人が亡くなった場合、団信に加入していれば残債は保険で完済されるのが一般的です。ただし団信に未加入の場合や保障対象外のケースでは、相続人がローンを引き継ぐことになり、相続放棄を検討せざるを得ない状況も生じます。相続が絡むケースは「相続した実家に住宅ローンが残っていた…団信確認・相続放棄・売却の正しい順番」もあわせてご確認ください。
リースバックが定年世代の選択肢になる理由
リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却し、その後は賃貸借契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。住宅ローンを完済しつつ自宅に住み続けたい方に向いた方法です。
リースバックの主なメリット
- 住宅ローンを一括完済できる:売却代金でローンを清算し、返済の負担から解放されます。
- まとまった資金を確保できる:ローン完済後の余剰金が生活資金になります。
- 固定費を削減できる:固定資産税や建物の修繕費の負担がなくなります(一方で家賃が発生します)。
- 住み慣れた家に住み続けられる:転居せずに経済的な見直しができます。
- 資産を現金化でき相続を整理しやすい:現金は分割しやすく、相続時の調整がしやすくなります。
ただしリースバックは「売却価格が市場相場より低くなりやすい」「賃料を払い続ける必要がある」というデメリットもあります。自宅を担保にお金を借りるリバースモーゲージとは仕組みが異なるため、両者を比較したうえで判断することをおすすめします。
モデルケースで見るリースバックの活用イメージ
以下はリースバックの活用イメージを示すモデルケースです。実際の売却価格・家賃・条件は物件や契約により大きく異なります。
ケース1:退職金だけでは完済できなかった元会社員(66歳・モデルケース)
住宅ローン残債1,800万円(残り10年)、退職金1,300万円、年金月18万円という想定。退職金を全額投入しても残債に届かず、月々の返済が年金生活を圧迫していました。リースバックを利用して残債を完済し、手元に資金を確保。年金の範囲で生活できるようになったというイメージです。
ケース2:配偶者の死別で返済が困難になった60代女性(モデルケース)
夫の死別後、団信で一部のみ弁済され住宅ローンが残ったという想定。遺族年金とパート収入では返済が重荷に。リースバックで残債を清算し、無理のない家賃水準で住み続けられるようになったイメージです。配偶者死別後の住まいの整理は「ローン残債ありで家を売る最短の方法」も参考になります。
ケース3:介護費用の確保のため決断した70代夫婦(モデルケース)
住宅ローン残債600万円、夫が要介護2に認定され介護費用が発生という想定。リースバックで残債を完済し、手元資金を確保。在宅介護を続けつつ、将来の施設入所にも備えられるようになったイメージです。
リースバックで失敗しないための注意点
リースバックは便利な仕組みですが、契約トラブルも報告されています。国土交通省は2024年以降、リースバックに関するガイドブックを公表し、契約時の重要事項説明の充実を求めています。以下の点は必ず確認しましょう。
注意点1:賃貸借契約の種類を必ず確認する
リースバックの賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。定期借家契約の場合、契約期間が満了すると再契約できず退去を求められることがあります。「ずっと住み続けられる」と説明されても、契約書上の条件を必ず確認してください。「終身で住める」「法的に保証される」といった口頭説明だけを信じるのは危険です。
注意点2:悪質な業者・不当な条件に注意
- 判断力が低下した高齢者に不利な契約を結ばせる
- 「今すぐ契約を」と急かして冷静な判断を妨げる
- 市場価格を大きく下回る価格での買い叩き
- 相場より高い賃料の設定
対策:契約前に必ず家族や専門家(宅建士・FP・司法書士など)に相談しましょう。なおリースバックはクーリングオフの対象外となるのが一般的です。
注意点3:将来の家賃支払い能力を慎重に見積もる
- 年金は物価や制度改定により実質的に変動する可能性がある
- 医療・介護費用は年齢とともに増える傾向がある
- 10年後・20年後の支払い能力まで含めて試算する
- 余裕を持った賃料水準かどうかを確認する
注意点4:契約条項を細かく確認する
- 更新条件(自動更新か、都度協議か)
- 賃料改定の有無と条件
- 修繕費用の負担区分
- 契約解除の条件(どんな場合に退去となるか)
- 買戻しの可否・価格・期限
FPコメント:リースバックは「自宅に住み続けたい」という希望を叶えられる一方で、売却価格は市場相場を下回りやすく、賃料の支払いが続く点に注意が必要です。売却・住み替え・借り換えなど他の選択肢と数字で比較したうえで判断するのが、後悔しないコツです。判断に迷う場合は、中立的な立場のファイナンシャルプランナーに相談すると整理しやすくなります。
リースバック以外の選択肢も比較しよう
「自宅に住み続ける」ことにこだわらない場合や、まだ返済を続けられる場合は、別の方法が適していることもあります。状況別に整理しました。
- 住み替え・売却を検討したい → 自宅を売って住み替える方法。残債があっても売却できるケースがあります。
- まだ返済を続けたい/月々の負担を下げたい → 借り換えで返済額を見直す方法。
- まず返済計画から整理したい → FPなど専門家への相談。
住み替え・売却を検討するなら、まず自宅がいくらで売れるかを知ることが第一歩です。複数社の査定を無料で比較できます。
返済をまだ続けたい方は、借り換えで月々の負担を抑えられる可能性があります。金利差や残期間によっては大きな効果が出ることもあります。
「自分の場合はどの選択肢が最適か分からない」という方は、家計や返済計画の専門家であるファイナンシャルプランナーに相談するのが安心です。
定年世代のためのリースバック実行ステップ
ステップ1:現状を整理する
- 住宅ローンの残債額と残りの返済期間を確認する
- 年金受給額(将来の見込みを含む)を把握する
- 医療・介護費用の将来的な見通しを立てる
- 自宅のおおよその査定額を調べる
- 家族と方針を話し合う
ステップ2:比較検討する
- 複数社から査定を取得する
- 賃料設定が妥当か確認する
- 契約条件を詳細に比較する
- 買戻し条件を確認する
- 宅建士・FPなど専門家に相談する
ステップ3:契約を準備する
- 必要書類を準備する
- 司法書士・税理士に相談する
- 家族の同意を得る
- 契約内容を最終確認する
- 契約後のサポート体制を確認する
よくある質問
認知症になったらどうなりますか?
成年後見制度を利用することで、後見人が本人に代わって契約を管理できます。事前に家族信託を設定しておくと、より柔軟に対応できる場合があります。判断能力に不安がある場合は、契約前に専門家へ相談することが大切です。
一人暮らしでも利用できますか?
一人暮らしでも利用できます。将来の施設入所を見据えて、住み慣れた家に住みながら資金を確保する目的で検討する方もいます。
年金だけで家賃を払い続けられるか不安です。
売却代金の一部を家賃の支払いに充てる方法や、子世帯と家賃を分担する方法もあります。契約前に長期の収支シミュレーションを行い、無理のない賃料か必ず確認しましょう。
契約者が亡くなった後、同居家族はどうなりますか?
配偶者や同居家族が新たに賃貸借契約を結ぶことで住み続けられる場合があります。ただし契約内容によって扱いが異なるため、契約時に「契約者死亡後の取り扱い」を必ず確認してください。
まとめ:定年後の住宅ローンは選択肢を比較して解決を
定年後に住宅ローンが残ることは珍しくありませんが、解決の手段はいくつもあります。
- 自宅に住み続けたい → リースバック
- 住み替え・売却を検討したい → 不動産一括査定で相場確認
- 返済を続けたい・負担を下げたい → 借り換え診断
- 判断に迷う → FPなど専門家への相談
どの方法にもメリットと注意点があります。複数の選択肢を数字で比較し、家族や専門家と相談したうえで判断することが、後悔しないための最大のポイントです。
まずは「自宅がいくらで売れるか」を知ることから
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引を推奨するものではありません。お金や不動産に関する最終的な判断は、宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー・司法書士・税理士などの専門家に相談のうえ行ってください。



