
「カードローンが残っている」「リボが膨らんだ」「自動車ローンもある」——この状態でも住宅ローンは通せます。
鍵は、返す順番とタイミング。審査は“返済比率(DTI)”と“信用情報”で見られるため、同じ100万円を返すにしても、どれから返すかで通過率が大きく変わります。
ここでは、通すための優先順位・具体的な手順・必要書類・やってはいけないことを、実務ベースでまとめました。
最初に結論|この順番で減らすと通りやすい
- 毎月の返済額が大きい借入(例:自動車ローン)を先に完済する
→ 月返済を大きく減らせる=DTIが一気に下がる - カードローン・リボ残高を減らしつつ、キャッシング枠を0円に変更
→ 残高だけでなく“枠”がDTIに算入される運用の金融機関があるため、枠を潰すのが効く - 携帯端末割賦・小口の分割は可能なら完済
→ 影響は小さいが、完済証明があれば説明材料になる
原則として、住宅ローンに他の借金を“おまとめ”することはできません(購入前に整理が基本)。また、否決直後の多重申込は逆効果。まずは原因を潰してから、相性の良い1〜2行に絞りましょう。
審査の土台|DTIと信用情報の基本
DTI(総返済負担率)の概念
多くの金融機関は、他の借入を含めて年収に対する年間返済額の割合を見ます。
総返済負担率(DTI)=(住宅ローンの年間返済額+他借入の年間返済額)÷ 年収
- 民間ローンの目安:30〜35%前後(商品・年収により異なる)
- フラット35の目安:年収400万円未満は30%、400万円以上は35%
- 審査は「審査金利」で試算される(変動でも高めの金利で計算)
信用情報の線引き
- 延滞61日以上(または3か月以上)等の異動情報は致命傷(消えるまで待つか商品切替)
- 申込情報は約6か月保有(短期の多重申込はマイナス)
- 完済・枠変更の反映には数日〜数週間かかることがある(証跡で補う)
信用情報は必ず一次情報で確認しましょう(CIC / JICC / KSC)。
“返す順番”の実務|なぜ自動車→カード→リボの順が効くのか
1. 自動車ローン(毎月返済が大きい)
- DTIに毎月額がそのまま乗るため、完済の効果が大きい
- 所有権留保がある場合は、一括精算→所有権解除→完済証明まで段取り
- 売却で精算するなら、査定→残債確認→不足分入金→解除の順で
2. カードローン(消費者金融/銀行カード)
- 残高はもちろん、限度枠の一部(例:毎月1〜3%)を返済に算入する運用がある
- 完済+限度枠の縮小(または解約)までやると効果が最大
- 証跡はアプリ画面のスクショ+会員サイトの契約変更通知を保存
3. リボ払い(あとからリボ含む)
- 毎月返済に含まれるが、残高が小さい場合のDTI影響は限定的
- 金利負担が高いので、家計の観点では優先して返す価値が高い
例で確認(効果の可視化)
年収:550万円、希望:3,000万円(審査金利3%・35年→月返済約120,000円と仮定) 他借入:自動車ローン 月35,000円、カードローン 月15,000円、リボ 月6,000円 DTI(Before)=(120,000+35,000+15,000+6,000)×12 ÷ 5,500,000 =176,000×12 ÷ 5,500,000 ≒ 38.4% → 厳しい 自動車ローン完済のみ(-35,000円) DTI(After1)=(141,000×12)÷ 5,500,000 ≒ 30.8% → 基準内に入る可能性 さらにカードローン完済+枠縮小(-15,000円) DTI(After2)=(126,000×12)÷ 5,500,000 ≒ 27.5% → 余裕が出る
このように、毎月額が大きい順に減らすのが最短の通過ルートです。
頭金に回すか、借金返済に回すか|判断の目安
- 審査通過を最優先:DTIが基準外なら、頭金よりも「毎月額の大きい借入の完済」を優先
- 金利負担の観点:消費者金融系14〜18%、カードリボ12〜15%。住宅ローン1%前後なら、高金利の借入を先に返す方が合理的
- 頭金が減りすぎると、借入比率90%超で金利帯が上がる商品もあるため、自己資金の残し方は要計画
1〜3日でやること(時系列チェック)
- 現状の棚卸し:各借入の残高・毎月返済・金利・限度枠を一覧化(家計簿アプリや表でOK)
- 信用情報の開示:CIC/JICC/KSCを取り寄せ、延滞・申込情報の有無を確認
- 返済順の決定:月額の大きい順+金利の高い順で優先順位を決める
- 返済資金の確保:ボーナス・貯蓄の中から無理ない範囲で。新規借入での借換は避ける
- 枠縮小・解約の申請:カードローン/キャッシング枠を0円に変更(コールセンターor会員サイト)
完済・枠変更後は、完済証明・契約変更通知の保存を忘れずに。信用情報の反映前でも、証跡の提出で説明できる場合があります。
提出書類と“見え方”を整える
- 完済証明・解約証明(PDF/郵送):返済直後は発行に数日かかることあり
- 限度枠変更のエビデンス:会員サイトの画面キャプチャ、受付番号、メール通知
- 残高証明・返済予定表:残る借入は正確な残高と毎月額を提出
- 入出金の整合性:大きな振込は理由をメモ(誰が何の目的で)
やってはいけないこと(否決を招く落とし穴)
- 否決直後の多重申込(申込情報が信用情報に並び、逆効果)
- 新しい借入での“借換え”(借入が更新され、DTIはむしろ悪化する)
- キャッシング枠の増額・新規カードの大量発行(審査部の警戒を招く)
- 家族からの“一時的な借入”を安易に使う(返済義務があればDTIに算入。贈与なら税務の確認が必要)
- 完済の証跡を残さない(信用情報の反映ズレ期間に説明ができない)
ケース別の打ち手
自動車ローンの残債が大きい
- ディーラーまたは信販会社に一括精算額を確認→完済→所有権解除→完済証明の順で処理
- 売却で精算する場合は、査定書・譲渡書類・入金記録をセットで保存
カードローンの利用枠が大きい(残高少)
- 枠縮小→0円に変更。カード自体は維持でもOK(ショッピング枠は通常DTIに算入されない)
- 会員サイトの「契約内容」画面をスクショ→審査書類に添付
リボ払いが慢性化している
- 「あとからリボ」を解除→残高一括 or 計画返済へ
- 利率が高いため、家計改善のためにも優先返済を
携帯端末の分割・未払いがある
- 小口でも延滞は絶対にNG。未払いは即日入金→領収保管
奨学金・教育ローンがある
- 制度上の金利は低め。DTIに与える影響で優先度を判断(自動車・カードより後回しが多い)
商品選びのコツ(相性の良い申込先)
- DTIがギリギリ:返済比率の基準や審査金利に余地がある地銀・信金、フラット35の活用を検討
- 信用情報に軽微なキズ:延滞解消後、時間を置くか、完済証明添付で説明可能な先へ
- スピード重視:ネット専業は速いがスコア型で融通は限定的。条件が整ってから申込む
よくある質問(FAQ)
Q. 借金が100万円あります。住宅ローンは通りますか?
A. 可能性はあります。大事なのは毎月返済額がいくらか。DTIが基準内に収まるように、月額の大きい借入から返済・枠縮小を行い、完済証明を添付しましょう。
Q. 自動車ローンは残したままでも大丈夫?
A. 毎月額が大きいため、DTIを圧迫します。完済の優先度は高いです。完済が難しい場合は、借入額または物件価格の見直しが必要になることがあります。
Q. クレジットカードは解約した方が良い?
A. カード自体の解約は必須ではありません。キャッシング枠を0円にし、リボ残高があれば解消するのが先です。
Q. 完済したのに信用情報に反映されません
A. 反映には数日〜数週間のタイムラグがあります。完済証明・入金記録・契約変更の通知を揃え、審査に添付すれば説明可能な場合があります。
Q. ボーナス返済を多めにすれば通りやすくなりますか?
A. DTIの試算は年間返済額で見るため、ボーナス返済で“通りやすくなる”ことは基本的にありません。家計のリスクも高まるため推奨しません。
Q. 親から一時的に借りて返済しても良い?
A. 返済義務があるなら新たな借入とみなされ、DTIに算入されることがあります。贈与は税務の確認が必要。安易な資金移動は避けてください。
Q. 異動(長期延滞)があるが、他を全部返せば通る?
A. 難しいです。異動情報は原則5年程度残ります。時間を置く・フラット35の検討など、別のアプローチが必要です。
出典・参考(公式)
- CIC(指定信用情報機関):保有情報・開示方法・保有期間
- JICC(指定信用情報機関):保有情報・開示方法・保有期間
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC):官報情報の保有期間 等
- 住宅金融支援機構(フラット35):総返済負担率の目安・商品概要
本記事は一般的な情報提供です。審査基準・取り扱いは金融機関・時期により異なります。最新の公式情報・商品概要説明書をご確認ください。
最後に(行動の順番がすべて)
- 毎月額が大きい借入から返す
- 枠は0円にする(証跡を残す)
- 反映前でも証明書を添えて説明
- 相性の良い商品に絞って出す
この4点を押さえれば、「借金があるから家は買えない」は思い込みです。次の一手、こちらで具体化します。