
離婚を考え始めたとき、もっとも頭を悩ませるのが「ペアローンで買ったマイホームをどうするか」という問題です。売るのか、どちらかが住み続けるのか。残債がある場合は売却できるのか。名義はどう整理するのか。判断を誤ると、離婚後も元配偶者と金銭的・法的に縛られ続けることになりかねません。この記事では、ペアローンの家を「売却するケース」と「片方が住み続けるケース」のリスクと手順を比較し、自分たちにとって現実的な選択肢を見極めるための判断材料を整理します。
この記事の結論
- ペアローンは「夫婦それぞれが債務者かつ連帯保証人」という二重構造のため、離婚後も関係を切るのが難しい
- 残債が売却額を下回る(アンダーローン)なら売却が最もシンプル
- 残債が売却額を上回る(オーバーローン)場合は、自己資金の補填や任意売却の検討が必要
- 片方が住み続ける場合は、名義変更・借り換え・連帯保証解除の3点が最大の壁
- 判断を急がず、まずは「家がいくらで売れるか」と「残債がいくらか」の2つを正確につかむ
そもそもペアローンとは何か|離婚時に問題になりやすい理由
ペアローンとは、夫婦それぞれが個別に住宅ローン契約を結び、互いに相手のローンの連帯保証人になる組み方です。たとえば夫が3,000万円、妻が2,000万円を借り入れ、合わせて5,000万円の住宅を購入するイメージです。
収入合算より借入可能額を伸ばしやすく、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットがある一方、離婚時には次のような問題が表面化します。
ペアローンが離婚時に厄介になる理由
- 夫婦どちらも「主債務者」であり、片方の返済が滞ると相手に請求がいく
- 互いが連帯保証人になっているため、離婚しても保証関係が自動で切れない
- 家の名義(共有持分)も2人に分かれているため、売却・名義変更には双方の同意が必要
- 団信もそれぞれに付いているため、片方だけ抜けると保障設計が崩れる
つまりペアローンは「夫婦であること」を前提に組まれた仕組みであり、離婚によってその前提が崩れると、契約上の整理に大きな労力がかかります。
最初にやるべき2つの確認|売るか住み続けるかの前に
選択肢を比較する前に、必ず押さえておきたい数字が2つあります。これがないと、どの選択肢が現実的かを判断できません。
- 住宅ローン残高を確認する
夫婦それぞれの金融機関から発行される「残高証明書」や、ネットバンキングで現在の残債を確認します。2人分を合算した金額が、家を手放すか維持するかを判断する基準になります。 - 家の市場価格を確認する
不動産会社の査定を複数社から取り、「今売ったらいくらになるか」を把握します。1社だけの査定では数百万円単位で誤差が出ることもあるため、複数社の比較が前提です。
この2つを比較すると、自分たちが「アンダーローン(売却額>残債)」なのか「オーバーローン(売却額<残債)」なのかが分かります。これが、選択肢の幅を決める最大の分岐点です。
まずは家の相場を知ることから
ペアローンの整理は「家がいくらで売れるか」が起点になります。HOME4Uは複数の不動産会社にまとめて査定依頼ができる無料サービスで、机上査定なら自宅にいながら相場感をつかめます。離婚を切り出す前に、夫婦どちらか一方の判断材料として静かに動きたいときにも使えます。
※査定は無料で利用できます。売却を確約するものではありません。
ケース別に整理|ペアローンの家、4つの選択肢
離婚時のペアローンの整理方法は、大きく次の4つに分かれます。それぞれの向き・不向きを表でまとめます。
| 選択肢 | 向いているケース | 主なリスク・ハードル |
|---|---|---|
| ①売却して残債を完済 | アンダーローンで、双方が手放すことに同意 | 双方の同意が必要、引っ越し費用 |
| ②自己資金を足して売却 | オーバーローンだが補填できる貯蓄がある | まとまった現金が必要 |
| ③任意売却 | オーバーローンで返済継続も困難 | 信用情報への影響、金融機関の同意が必要 |
| ④片方が住み続ける | 子の学区維持などで家を残したい | 名義・連帯保証・借り換えの整理が必須 |
売却する場合|手順とつまずきやすいポイント
アンダーローンならシンプルに完済できる
売却額がローン残債を上回る場合、売却代金で2人分のローンを一括返済し、抵当権を抹消できます。残ったお金は財産分与の対象として、夫婦で分ける形になります。費用面では仲介手数料、抵当権抹消登記費用、譲渡所得税などがかかる点に注意してください。
オーバーローンの場合は3つの選択肢
オーバーローン時の対応
- 自己資金で不足分を埋める:最もシンプル。夫婦のどちらが、いくら負担するかを話し合いで決める
- 住み替えローンを使う:新居の購入と合わせて旧ローンの不足分を借り換える方法。審査は厳しめ
- 任意売却:返済継続が困難な場合に、金融機関の同意を得て市場価格で売却する手続き
任意売却で見落としやすい注意点
任意売却は競売よりも有利な条件で売れる可能性がある一方、金融機関との交渉が前提となり、信用情報に事故情報として登録されるケースがあります。今後数年間、新たな住宅ローンやクレジットカードの審査に影響する可能性があるため、安易に選ぶ前に弁護士や任意売却の専門会社へ相談してください。
売却の流れ
- 残債と査定額を確認し、アンダーローンかオーバーローンかを判定
- 夫婦で売却の合意をし、不動産会社を選定
- 媒介契約を締結し、売却活動開始
- 買主が決まったら売買契約・決済
- 売却代金で2人分のローンを完済し、抵当権を抹消
- 残金または不足分を財産分与・精算
離婚と売却のタイミングについては、離婚で家を売るのは離婚前それとも離婚後?|名義・同意・財産分与の手順を徹底解説で詳しく整理しています。タイミングひとつで税金や財産分与の扱いが変わるため、合わせて確認しておくと判断がぶれません。
片方が住み続ける場合|最大の壁は「連帯保証解除」
「子どもの学区を変えたくない」「思い入れのある家を残したい」などの理由で、片方が住み続ける選択をする夫婦も少なくありません。ただし、ペアローンのまま住み続けるのは想像以上にリスクが大きい選択です。
そのまま住み続けるとどうなるか
名義も保証も変えずに住み続けるリスク
- 家を出た側も、自分名義のローン返済義務が残り続ける
- 住み続ける側の返済が滞ると、家を出た側に請求される
- 家を出た側が新たに住宅ローンを組もうとしても、既存ローンが負担となり審査が通りにくい
- 連帯保証関係が切れていないため、相手が再婚・転職・破産しても影響を受ける
理想は「単独名義への一本化」
住み続ける側に十分な収入があれば、相手の持分を買い取り、自分の単独名義のローンに借り換えるのが最も安全です。具体的には次の手順になります。
- 住み続ける側が、残債全額をカバーできる単独ローンを組めるか審査を受ける
- 承認が出たら、相手の持分を買い取る形で所有権移転登記を行う
- 新しいローンで2人分の旧ローンを一括返済し、抵当権を再設定
- 連帯保証関係を解消する
ただし、ペアローンを組んだ時点で2人分の収入を前提に審査が通っていることが多いため、片方の収入だけで残債全額を借り直せるとは限りません。審査が通らない場合は、頭金として自己資金を入れる、借入期間を延ばす、より審査の柔軟な金融機関を探すといった工夫が必要です。
借り換え可否の目安(あくまで一般的な傾向)
| 状況 | 単独借り換えの実現性 | 補足 |
|---|---|---|
| 住み続ける側の年収が、残債の7倍程度を上回る | 比較的高い | 金融機関により基準は異なる |
| 年収倍率が7〜10倍 | 条件次第 | 頭金や期間延長で調整できる場合あり |
| 年収倍率が10倍超 | 難しい | 売却や別の選択肢を検討 |
※年収倍率はあくまで目安で、勤続年数、他の借入、信用情報、物件評価などにより審査結果は変わります。
共有名義のままでは、将来住み続ける側が再度住宅ローンを組みたいときにも障害になります。共有名義ローンのまま離婚した場合の対処法は、離婚後の共有名義ローンがあっても住宅ローン審査に通る方法|複雑な債務関係の解決策でも整理しているので参考にしてください。
よくある失敗例|判断を誤りやすい3つのパターン
失敗例①:口約束で「相手が払い続ける」と決めた
離婚協議書に明記せず口約束で済ませた結果、数年後に相手が返済を止め、自分のところへ督促が来た。連帯保証関係は離婚協議書では切れないため、金融機関との手続きが別途必要です。
失敗例②:家の相場を確認せずに財産分与を決めた
「ローン残債とほぼ同額」と思い込んで分与を決めたが、実際は売れば数百万円のプラスが出る物件だった。査定を取らないまま協議を進めると、離婚後にトラブルになる可能性があります。
失敗例③:住み続ける側が借り換え審査に落ちて宙に浮く
「住み続ける」前提で離婚成立を急いだものの、いざ借り換え審査に出したら通らず、結局売却することに。先に審査の見込みを立てておくことが大切です。
判断フロー|あなたはどの選択肢が現実的か
- 残債と査定額を比較する → アンダーローンなら売却が最もシンプル
- オーバーローンなら自己資金で埋められるか → 埋められれば売却可能
- 埋められない場合は返済継続できるか → 困難なら任意売却を検討
- 家を残したい場合、住み続ける側が単独ローンを組めるか → 組めれば借り換えで一本化
- 単独借り換えが難しい場合 → 売却を含めて再検討
専門家への相談を検討すべきタイミング
ペアローンの整理は、不動産・住宅ローン・税金・法律・家計のすべてが絡みます。一人で判断しきれないと感じたら、次のような相談先を組み合わせて使うのが現実的です。
- 不動産会社:家の市場価格、売却の進め方、買い取り査定
- 金融機関:残債の確認、借り換え可否、連帯保証解除の手続き
- 弁護士:離婚協議書、財産分与、任意売却時の交渉
- FP(ファイナンシャルプランナー):離婚後の家計、住居費、養育費を含めた長期収支
離婚後の家計まで含めて見通しを立てたい方へ
「家を売って終わり」ではなく、その後の生活費・住居費・教育費まで含めた家計の組み立てが必要です。FP相談では、離婚後の収入と支出をシミュレーションし、住み替え予算や賃貸との比較、保険の見直しまで一括で整理できます。家を残すか手放すかの判断材料としても役立ちます。
※相談は無料です。商品契約の強制はありません。
そもそも離婚自体を迷っている、住宅ローンが残っている状態でどう動けばよいか分からないという方は、住宅ローンが残っていて離婚できない?持ち家ありでも動ける現実的な5つの選択肢も合わせてご覧ください。
よくある質問
離婚協議書に「相手がローンを払う」と書けば、自分の返済義務はなくなりますか?
ペアローンを片方の単独名義に変更するだけならできますか?
オーバーローンでも売却することはできますか?
住宅ローン控除は離婚後どうなりますか?
家を売る前に離婚した方がよいですか?
まとめ|まずは「数字を確認する」ことから
- ペアローンは離婚しても契約関係が自動で切れない仕組み。協議書だけでは整理できない
- 判断の起点は「残債」と「査定額」。この2つを正確につかむことが最優先
- アンダーローンなら売却が最もシンプル。残った資産は財産分与で精算
- オーバーローンは自己資金補填、住み替えローン、任意売却の順で検討
- 片方が住み続けるなら、単独借り換えで連帯保証関係まで解消するのが理想
- 不動産・金融・法律・家計が絡むため、複数の専門家を組み合わせて使うのが現実的
感情的に「売りたい」「残したい」と決める前に、数字で現実を確認することが、離婚後の生活を守る一番の近道です。査定もFP相談も無料で使える窓口があるので、まずは情報を集めるところから始めてみてください。
運営:マイホーム購入・住宅ローン審査ナビ編集部
住宅ローン審査・住宅購入・不動産売却・住み替え・家計に関する情報を、公的機関や金融機関の公開情報をもとに整理して発信しています。本記事は、国土交通省、法務局、各金融機関の公開情報を参照し、離婚と住宅ローンに関する一般的な実務内容をもとに執筆しています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や判断を保証するものではありません。住宅ローンの審査結果は金融機関、申込者の属性、信用情報、物件条件などにより異なります。税制・法律・補助金などの制度は変更される可能性があります。実際の手続きや判断にあたっては、金融機関、不動産会社、弁護士、税理士、ファイナンシャルプランナーなど、それぞれの専門家へ必ずご確認ください。



