
「変動金利がついに1%を超えた」というニュースを見て、今のローンを見直すべきか迷っている方は少なくありません。ただ、1%という数字そのものに損得を決める意味はありません。判断の軸になるのは、自分が今払っている適用金利と、今から借り換えた場合に提示される新規の金利との差です。特に2010年代前半に住宅ローンを組んだ方は、当時の金利優遇幅がそれほど大きくなかったため、金利上昇局面でも借り換えの余地が残っているケースがあります。この記事では、「1%を超えたから焦る」のではなく、自分の状況を数字で確認する方法を整理します。
結論:1%超えは「入口の目安」にすぎない
先に結論を書きます。変動金利が1%を超えたという事実だけでは、借り換えるべきかどうかは判断できません。確認すべきなのは次の2点です。
判断の軸になる2つの数字
- 今、自分が実際に払っている適用金利(基準金利から自分の優遇幅を引いた金利)
- 今、新規で借りた場合に提示される優遇後の金利(2026年時点でおおむね0.9〜1.2%台が目安)
この2つの差が大きい人ほど、借り換えの効果が出やすくなります。2010年代前半に借り入れをした方は、当時はまだ金融機関同士の優遇幅競争が今ほど激しくなく、優遇幅が1.0〜1.5%程度にとどまっていたケースが一般的でした。一方で、その後の基準金利の上昇をそのまま受けているため、「借入当初は1%台前半だったのに、今は1.5〜2%台まで上がっている」という方が一定数存在します。こうした層は、1%という心理的な節目とは関係なく、借り換えメリットが大きく残っている可能性があります。
なぜ「1%」という数字だけで判断すると失敗するのか
変動金利の適用金利は、金融機関が示す基準金利から、審査時に決まる優遇幅を差し引いて決まります。基準金利は多くの銀行で「短期プライムレート+1%」を基準にしており、短期プライムレートは日本銀行の政策金利の動きに連動します。2026年6月の金融政策決定会合では、日本銀行が政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げ、これは1995年以来約31年ぶりの水準となりました。短期プライムレートの動向は日本銀行の公表資料で確認できます。
問題は、優遇幅が借入時の審査で決まり、その後の返済期間中はほぼ固定される点です。つまり、同じ「変動金利1%超え」という状態でも、その内訳はまったく違います。基準金利があまり上がっていない中で優遇幅が小さいために1%を超えている人と、基準金利の上昇をそのまま受けて1%を超えた人とでは、借り換えで得られるメリットの大きさが変わってきます。ここを混同すると、「1%を超えたから急いで動く」あるいは「1%くらいなら様子見でいい」という短絡的な判断になりやすく、実際の金利差を見落としてしまいます。
誤解しやすいポイント
「変動金利は全員同じペースで上がっている」というのは誤解です。基準金利の改定タイミングや反映時期、5年ルール・125%ルールの有無は金融機関ごとに異なります。5年ルールが適用される契約では、金利が上がっても5年間は毎月の返済額自体は変わりませんが、返済額のうち利息の占める割合が増え、元本の減り方が遅くなります。返済額が変わらないため気づきにくい点には注意が必要です。
独自シミュレーション:借入年別・当時の優遇幅と今の借り換えメリット早見表
ここからは、借入時期による優遇幅の違いを踏まえて、2026年時点でどの程度の借り換えメリットが残っている可能性があるかを目安として整理します。基準金利や優遇幅は金融機関・個人の属性によって異なるため、以下はあくまで一般的な傾向を示す概算シミュレーションであり、実際の金利は必ずご自身の契約内容と、借り換え先で提示される見積もりで確認してください。
| 借入時期の目安 | 当時の優遇幅の目安 | 2026年時点の適用金利の目安 | 借り換え後の新規金利の目安 | 差が出やすいポイント |
|---|---|---|---|---|
| 2010〜2013年頃 | 1.0〜1.5%程度 | 1.5〜2.1%程度 | 0.9〜1.2%程度 | 優遇幅が小さいまま基準金利の上昇を受けており、差が大きく残りやすい |
| 2014〜2016年頃 | 1.5〜1.8%程度 | 1.3〜1.7%程度 | 0.9〜1.2%程度 | 差は中程度。残債・残期間次第で借り換え効果あり |
| 2017〜2021年頃 | 1.8〜2.0%程度 | 1.1〜1.4%程度 | 0.9〜1.2%程度 | 優遇幅が大きく、差が小さいため慎重に検討が必要 |
| 2022年以降 | 1.8〜2.0%程度以上 | 0.9〜1.2%程度 | 0.9〜1.2%程度 | 差がほぼないケースが多く、借り換え効果は限定的 |
この表からわかるのは、「1%を超えている」という状態だけを見ると2010年代前半に借りた層も2020年代に借りた層も同じように見えてしまう一方で、実際の借り換えメリットはまったく異なるという点です。2010年代前半に借りた方は、優遇幅の小さいまま基準金利の上昇を受け止めてきたため、1%を超えていても「まだ様子見でいい」と考えるのではなく、いま一度、借り換え先の見積もりを確認する価値があります。
判断フロー:借り換えを検討すべきか4つのステップで確認
- ステップ1:今の適用金利を契約書または返済予定表で確認する
基準金利や優遇幅ではなく、実際に払っている金利(適用金利)を確認します。 - ステップ2:今の新規貸出金利の目安を確認する
複数の金融機関の変動金利の優遇後金利を比較サイトなどで確認します。2026年時点では0.9〜1.2%台が一つの目安です。 - ステップ3:金利差×残債で見込みメリットを計算する
金利差が0.3%以上あり、残債が1,000万円以上、残期間が10年以上残っている場合は、借り換えメリットが出やすい傾向にあります。 - ステップ4:借り換えコスト(諸費用)と比較する
借り換えには事務手数料、保証料、登記費用など数十万円単位の諸費用がかかります。金利差によるメリットが諸費用を上回るかどうかを確認します。
損益分岐点の考え方
借り換えの損益分岐点は、「借り換えによって減る利息額」と「借り換えにかかる諸費用」の大小関係で考えます。一般的に、借り換えの諸費用は借入額のおよそ2〜3%程度になることが多いとされています。例えば残債2,000万円、残期間20年、金利差が0.5%あるケースでは、年間の利息軽減額は概算で10万円前後になることがあり、諸費用が50〜60万円程度であれば5〜6年程度で回収できる計算になります。一方で、残債が少ない場合や残期間が短い場合は、金利差が同じでも回収に時間がかかり、借り換えの効果が薄くなることがあります。金額は個々の借入条件によって大きく変わるため、実際の判断は借り換え先の見積もりで確認する必要があります。
借り換えを検討する価値がある目安
- 今の適用金利と新規金利の差が0.3%以上ある
- 残債が1,000万円以上残っている
- 残期間が10年以上ある
- 健康状態に大きな変化がなく、団信の再加入に不安がない
借り換えを急がなくてもよいケース
- 金利差が0.2%未満で、残債・残期間も少ない
- 近い将来に売却や住み替えを予定している
- 諸費用を負担できる資金の余裕が現状ない
注意点・例外条件
借り換えの検討にあたっては、良い面だけでなく注意点も押さえておく必要があります。金利優遇幅は金融機関ごとに審査で決まるため、現在の年収や勤続年数、他の借入状況によっては、以前より優遇幅が小さくなる可能性もあります。また、団体信用生命保険(団信)は借り換え時に再加入となるため、健康状態によっては加入できない、あるいは条件が変わる場合があります。さらに、5年ルールや125%ルールの有無、返済方法の違いなど、契約内容は金融機関によって異なるため、現在の契約内容を必ず確認したうえで比較することが欠かせません。制度や金利は今後変更される可能性があるため、本記事の数値はあくまで執筆時点の一般的な目安として捉えてください。
ケーススタディ
ケース1:2012年に借入、優遇幅1.2%だったAさんの例
2012年に3,000万円を借り入れ、当時の優遇幅は1.2%程度でした。その後の基準金利の上昇を受け、2026年時点の適用金利はおよそ1.7%まで上がっていました。残債は約1,800万円、残期間は21年。借り換え先で優遇後1.0%程度の金利が提示され、金利差は0.7%。諸費用約55万円を差し引いても、年間の利息軽減効果が数十万円規模で見込めるため、借り換えを進める判断をしました。
ケース2:2019年に借入、優遇幅1.9%だったBさんの例
2019年に借り入れたBさんは、当時から優遇幅が1.9%と大きく、2026年時点の適用金利は1.2%程度でした。借り換え先で提示された金利も1.0%程度で、金利差はわずか0.2%。残債と残期間を踏まえると、諸費用の回収に時間がかかると判断し、今回は見送り、金利がさらに上がった段階で再検討することにしました。
この2つの例のように、「1%を超えている」という共通点があっても、優遇幅の差によって借り換えの結論はまったく変わります。まずは自分がどちらのパターンに近いかを、実際の見積もりで確認することが next stepになります。
自分の適用金利と、今借り換えた場合の金利差がどの程度あるのかは、自分だけで正確に把握するのが難しいポイントです。複数の金融機関を横並びで比較すると、優遇幅や団信条件の差が見えやすくなります。
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よくある質問
変動金利が今後さらに上がった場合、借り換えても再び金利が上がるのでは意味がないですか。
借り換えの審査は、最初に住宅ローンを組んだときより厳しくなりますか。
借り換えの諸費用はどのタイミングで支払いますか。分割で払えますか。
まとめ
変動金利が1%を超えたという事実だけでは、借り換えるべきかどうかは決まりません。判断の軸になるのは、自分が今払っている適用金利と、今の新規貸出金利との差です。2010年代前半に借り入れをした方は、当時の優遇幅が小さかったために、金利上昇局面でも借り換えメリットが残っているケースがあります。まずは自分の適用金利を確認し、複数の金融機関で新規金利の見積もりを取り、金利差・残債・残期間・諸費用のバランスで判断することが next stepです。
借入年別の優遇幅の違いについては、金利が高い時代に借りた人向け|借り換え診断でも詳しく整理しています。また、「なかなか金利が下がらない」と感じている方は住宅ローンの金利が下がらない人の特徴5選もあわせてご覧ください。具体的な残債3,000万円のケースで数字を確認したい方は残債3,000万円・残期間25年の借り換えシミュレーションが参考になります。今後の金利動向そのものが気になる方は住宅ローン金利は今後どこまで上がる?もご確認ください。
著者・監修に関する情報
運営:マイホーム購入・住宅ローン審査ナビ編集部
対応分野:住宅ローン審査・借り換え・住宅購入・不動産売却・住み替え・家計見直し
参考にした公的情報:日本銀行の政策金利および短期プライムレートに関する公表資料
確認方針:記事内容は公表されている公的情報・業界団体の資料をもとに作成しており、断定的な表現を避け、根拠不明の数値は使用していません。掲載後も金利・制度の変化に応じて内容を見直します。
免責事項
本記事で紹介した金利・優遇幅・シミュレーションの数値は、執筆時点における一般的な傾向を示す目安であり、将来の金利動向や個別の借り換え条件を保証するものではありません。実際の適用金利、優遇幅、審査結果は、金融機関、申込者の属性、信用情報、物件条件などにより異なります。制度・税制・金利は今後変更される可能性があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の借り換え判断については、金融機関、不動産会社、ファイナンシャルプランナーなど専門家に確認したうえで進めてください。



